園長は時々、お葬式で幼稚園を空けます。そこでは、いろんなシーンがあり、「生きるとは」を考えさせられます。
　ある時、おばあさんが亡くなって、ご子息が挨拶をされました。故人は明るく多趣味な方で、バレーボールやボウリング、合唱など様々な趣味を持っていらしたそうです。そして、出かけるときに「息子さんの手を引いて一緒に歩いていた」ことを、今でも覚えていらっしゃるとのこと。多分小学校前でしょう…との事ですから、まさに今、幼稚園に通っている子ども達の時期です。５０年経っても覚えているのです。
　また、合唱ではアルトパートで、家で練習するのを聞いていたらそちら（いわゆるハモり）ばかり覚えてしまったとの事。きっとお誕生日会の歌をお母さんが練習している期間には、それぞれの家で似たようなことが起きているのだろうなと思いました。
　私達は、日々様々な思いを抱えて、思い出を持って、生きているのだと思います。そして、ぼんやり薄れてゆきながらも、この幼児期の思い出がずっと（少なくとも５０年）、その人の何かを支えているのだろうと思います。そういう意味で大切な幼児期、どうかいろんな経験を一緒にしてあげて欲しいと思いました。

　いずれ、子ども達とは手を繋がなくなる時期が、そして手を繋げなくなる時は来ます、必ず。

　でも、そうなった後も、手を繋いだ思い出は、生き続けるのだと思います。