学校法人明照学園

第2回:躾についての「我が家のビジョン」を決めよう——なぜ難しい?それでも必要な理由

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第2回:躾についての「我が家のビジョン」を決めよう——なぜ難しい?それでも必要な理由

第2回:躾についての「我が家のビジョン」を決めよう——なぜ難しい?それでも必要な理由

2026/02/18

話し合いがなぜ難航するのか?

 「躾は大事だと思う。でも、夫婦で話すのは難しい」——これは多くのご家庭が感じていることです。話し合いが難しいのは、夫婦の努力不足というより「前提が違うから」です。根本的に言って、私たちはそれぞれ違う家庭で育ち、違う常識の中で「叱られ方」「許され方」「親のふるまい」を体に染み込ませてきたからです。

 たとえば、同じ「食事中の態度」でも、「まずは楽しく。多少のことは目をつぶる家庭」で育った人と、「食事=しつけの時間。姿勢や作法を整える家庭」で育った人では、反射的に出る言葉が違います。片づけでも、「最後は親が整えて終える家庭」と、「自分で最後までやり切らせる家庭」では、ゴールの置き方が変わります。つまり夫婦は、同じ子どもを育てていても、頭の中にある「理想の家庭像=あるべき振る舞い」が最初から一致していないのです。もちろん各々、「自分がされたことが普通で当然」と思っています。

 さらに厄介なのは、躾の場面はたいてい急に起きること。子どもが泣く、怒る、兄弟げんかになる、時間がない——。その瞬間、私たちは「落ち着いて話し合う」より先に、身体が覚えているやり方(自分が育った家のやり方)へ戻りがちです。だからこそ、夫婦で一致しにくい。これは努力不足というより、自然な現象です。

 親の不一致や文化的な違いが、躾の一貫性を崩しやすいことは、子どものしつけを扱う医学的な文献でも指摘されています。子どもは大人の対応が揺れると混乱し、うまくいきにくくなる——だから不一致を放置しないことが大切だ、と。

 

しかし、ビジョンを決める必要はある

 では、なぜ「我が家のビジョン」を決める必要があるのでしょうか。理由はシンプルです。ビジョンがないと、対応は「その場しのぎ」でしかなくなり、最終的に親が疲れ、声が大きくなり、子どもは試し行動(あまのじゃく・反対行動)を増やしやすくなるからです。一貫性がないと、子どもは毎回「今日はどこまでOK?」を探ります。結果として注意が増え、親は「また怒ってしまった」と自己嫌悪し、夫婦も「あなたが甘い/厳しい」と責め合いやすくなる。躾の問題は、いつの間にか夫婦関係の問題に見える形で現れてしまいます。逆に言えば、ビジョンを決めることは「躾のため」である以上に、「夫婦が同じチームになるため」の作業です。 

 

ここで言うビジョンは、細かいルール帳を作ることではありません。まず決めたいのは、たった一つ——「私たちは、どんな力を子どもに残したいか」。UNICEFは、怒鳴る・叩くことは助けにならず、代わりに「関係づくりと、期待を明確にすること」を軸にした関わりを勧めています。つまりビジョンとは、「罰で止める」ではなく「育てたい力に向けて教える」ための方位磁針です。

 だからこそ、ビジョンを短い言葉に言語化する価値があります! 細部までの一致は難しくても、「我が家は何を大切にするか」が短い合言葉になると、迷ったときに戻れる場所ができます。子どもにとっても、親にとっても、家庭が「見通しの立つ場所」になっていきます。

 

ビジョン決めのガイドライン

 ビジョン決めを、今日から進めるための提案を3つだけ共有します。

1つ目。「優先順位を決める」。全部は一致しません。だから最初は、安全/人を傷つけない/生活が回る(睡眠・食事・登園準備)など、家庭として譲れない順をそろえる。文献でもルールは優先順位をつけ、最初は少数から、が勧められています。 

2つ目。「言葉を短くそろえる」。家庭の現場では長い説明より、短い合言葉が効きます。「手は止める」「おはようを言う」「3つは片付ける」など、夫婦で同じフレーズを持つ。UNICEFも、してほしい行動を明確に伝えることが有効だと述べています。 

3つ目。「決める場面を選ぶ」。子どもが荒れている最中に決めようとしない。夫婦と子どもが「その場面」に巻き込まれていない、落ち着いた時間(寝かしつけ後・朝の支度前など)に話す。第1回でも触れた通り、これは家庭の運用ルールです。 

 

子どもへの願いを、共有する

 夫婦の常識は違って当然です。だからこそ、ビジョンを短い言葉にして持つことが、家庭を助けます。細部まで一致させなくていい。けれど「我が家は、子どもにどんな力を残したいか」だけは、必ず言葉にしましょう。そこがそろうと、日々の迷いが減り、親の声が少し静かになり、子どもは安心して育っていきます。そんな家庭を、ひとつずつ増やしたい——それが園長としての願いです。

次回(第3回)では、いよいよ「話し合いをする時に、心掛ける点」を、「揉めないための段取り」として具体化していきます。

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