学校法人明照学園

嘘つきの話で笑ってもらう。

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嘘つきの話で笑ってもらう。

嘘つきの話で笑ってもらう。

2025/01/27

 1月の「お御堂参り」では、吉四六さんの「まさかの話〜自分の頭を食べたヘビ〜」をやりました。

 こういった「お話しの中にお話しが出てくる」というのを「話中話」または「劇中劇」と呼ぶのですが、その中で「あり得ない、嘘の話」を扱ってみました。

 

 吉四六さんと話し好きのおじさん。「私の話を聞いて、”まさか!!”と言ったら負けですからね」という仕立てでヘビの話が語られます。

 冬に食べ物のなくなったヘビが、自分の尻尾から囓り始めて、ついには自身を食べ尽くして消えてしまった、というもの。それを聞いて”まさか!!”と言ってしまい、「はいお疲れ様でした」というオチです。

 

 子ども達だって「そんなのあり得ない!」と感じるでしょうが、嘘を扱っているにも関わらず楽しく感じるというのは、とても興味深いものです。というのは、現代では「嘘=すべてダメ」という風潮があるからです。

 

 確かに仏教でも「嘘は言ってはいけない」と説き、小さい頃から「嘘ついたらダメですよ」と躾けられてきました。けれども、それとは違うフィールドで、嘘は許容されているのだと思います。今回でも「吉四六さん、嘘つきだからいけないんだ」という感覚を持った子はいなかったでしょう。

 

 しかし、私達が普段暮らしている世界では、「嘘はいけない」という価値観が、余りにも大きく横たわっているような気がします。確かに、人を傷つけたり信頼を損なったりするような悪意ある嘘を防ぐためには必要な教えでしょう。しかし、すべての嘘を一律に否定してしまうと、私たちが持つ空想力や創造性、そして夢を広げるための豊かな文化の土壌を狭めてしまう危険性があるのではないでしょうか。


 例えば、絵本や童話の中に登場する非現実的な話や、子どもたちの遊びの中で繰り広げられる空想の世界。これらも「嘘」という見方をすれば、現実ではあり得ない話です。しかし、それらは人間の想像力を刺激し、新しい考えや価値観を育てるための大切な要素です。

 
 今回の吉四六さんの話でも、子どもたちはその嘘を「楽しいもの」として受け止めていました。あり得ない話だとわかっていながら、それを否定することなく、笑ったり驚いたりすることで物語を楽しんでいたのです。ここには、嘘を嘘と知った上で楽しむ余裕や、物語を通じて世界の広がりを感じる力がありました。


 「嘘はいけない」という価値観を全面的に正義とすると、こうした遊びや文化的な豊かさが「無駄なもの」として排除されてしまう恐れがあります。嘘を否定するだけではなく、その背景や意図を考え、どのような嘘が人を幸せにするのか、あるいはどのような嘘が文化や社会を豊かにするのかを考えることが、私たち大人には必要なのではないでしょうか。
 そして、この考え方は子どもたちの教育にもつながります。「嘘をつくことは悪い」とただ叱るのではなく、「どうしてそんな事を言ったの?」と背景を聞いてみたり、時には空想や遊びの中での嘘を一緒に楽しむことで、子どもたちが嘘と誠実さのバランスを自然と学ぶ機会を作ることができるのではないでしょうか。「コレコレだったから、あんな事を言った」というのは得てして子どもの深い願望に触れることがあります。


 嘘そのものが問題なのではなく、それがどう使われ、どんな影響を与えるのかが重要です。吉四六さんの話のように、人を笑わせたり、驚かせたりする嘘は、私たちの心を柔らかくし、社会にユーモアや温かみをもたらします。そんな「豊かな嘘」の存在を、もう一度見直してみても良いのではないでしょうか。

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